年を重ねると人は「花鳥風月」を愛するようになると言います。
花を愛で、鳥の声を聞き、風を感じて、月に照らされる。
東京の郊外でひっそりと1人で落ち着いた生活を続けていると、花鳥風月の良さがわかってくるような気がします。(まだ30代なんですけど…)
なんでも現代人が1日に得る情報量は江戸時代の人の1日分、平安時代の人の1年分だとか。
まぁ、到底処理できないほどの情報に日々晒され続けているってことですね。
普通に生きていると、たくさんの刺激的な情報になれていき、どうやったって花鳥風月を感じるなんて無理な気がします。
実は誰しも忙しく生きたいとは思っていないのではないでしょうか?
だとすれば、ゆっくり生きることを学ばなければならない。
それこそ花鳥風月を感じられるまでに。
その花鳥風月の最高のお手本になるのがターシャ・テューダーその人です。
ターシャ・テューダーを知ったのは「まぶしい庭へ」という本を買ったことから。
「まぶしい庭へ」は詩人エミリー・ディキンスンとの共作で、エミリーの詩とターシャの絵で構成されています。
実はエミリー・ディキンソンの詩を詠みたいと思い買った本。
ターシャ・テューダーのことはそれまで知らなかったんです。
しかし、本に描かれているその自然の風景に心を奪われました。
すっかりターシャに興味をもったぼくは、関連商品をAmazonで検索して映画「ターシャ・テューダー 静かな森の物語」にたどり着いたというわけです。
映画「ターシャ・テューダー 静かな森の物語」とは
ターシャ・テューダー本人が登場するドキュメント映画です。
ターシャが晩年暮らしたバーモンド州の自宅と庭の紹介、インタビューで構成されています。
2017年に公開されました。
ターシャ・テューダーはアメリカを代表する絵本作家。
生涯にわたり80冊以上の本を出版し、その絵は「アメリカ人の心を表現する」と言われています。
クリスマスカードにもよく利用され、もしかしたらあなたも見たことがあるかも。
この映画はおばあちゃんのドキュメントですから、ハリウッド映画のような興奮はありませんw
一方で芸術映画のように革新的技法や斬新なストーリーを楽しむものでもありません。
約90分、美しい風景と芯のある言葉が流れてくる”だけ”の映画です。
音楽でいえばジャズやクラシックといった歌のない音楽。
文芸でいえば詩。
そんな落ち着いた映画です。
風景だけでなく、音も美しい映画
こういった美しい田園風景を切り取った映画はいくつか見たことがあるのですが、心に残っているはその音です。
虫や鳥の声、風で葉がゆれる音が実にリアルに収録されています。
18世紀風の家や色とりどりの花が咲き乱れる庭はもちろん美しいですが、音が映像によりいっそうの華を添えています。
目と耳でその映像を感じていると、ぬくもりや匂いさえ感じてくるようです。
リラックスして見れる映画である一方、積極的に五感を研ぎ澄まして、映画から流れてくる空気を感じたい。
近年の映画の進化と言うと、CGや4DX的な部分が目立ちますが、きっと一昔前ならこれほど立体的に”自然の音”を収録できなかったのではないかと思います。(あるいは編集技術の進化か)
幸せは自分で創り出すもの
ぼくたちは日々、膨大な情報を受け取っています。
きっとそのほとんどが社会人としての「利益」と「不利益」に関することでしょう。
不安と欲望を扇動されて、本当に大切なものが何なのかわからなくなりそうです。
いつのまにか「あれがなくちゃ、これがなくちゃ」と幸せに条件をつけてしまう。
その条件とやらを手に入れてみても、なんだか満足しなくてまた次へ。
人生はお金や地位や名誉を手に入れてもそこで終了じゃない。
そして条件にはまったくもって上限がないのです。
だとすれば、幸せに条件をつけるのではなく、まずは今を幸せに生きようとする態度こそ重要ではないでしょうか。
ところがこんな言葉、圧倒的な現代の価値観の中ではまず間違いなくキレイごととして片付けられてしまいます。
「とは言え、お金は大切でしょ?」
そんなことはわかっている。
でもそれだけじゃダメなんだ。
いみじくもか弱い幸福論。
しかしターシャは力強く肯定してくれます。
人生なんてあっという間に終わってしまうわ
好きに生きるべきよ
幸せは自分で創り出すのよ
この忙しい社会の中で、人が大切な何かを無くしていることに気付いている人がいます。
しかしその「何か」をハッキリと自覚したり、それに自信を持つことができない人がほとんどでしょう。
この映画には間違いなくその「何か」が描かれていると思います。
例えば「自然を愛する」といった人生哲学を誰からも肯定されず、ひっそりと心のうちに秘めている人は、この映画をみればきっと勇気づけらると思います。
ターシャはまさに創る人でした。
絵本作家としてはもちろん、日常の服や雑貨、料理やぬいぐるみまで!
心はやはり行動から作られるものでしょうから、ターシャの1つ1つの行いが心の豊かさへのヒントだと思います。
本当の「癒し」を学ぶ映画
週末にもなれば、色んな企業があなたを癒そうをたくさんの広告が現れます。
「明日への活力」「自分へのご褒美」と言えば聞こえは良いけれど、その実ただの気休めになっていないでしょうか。
この映画も大きく括ればたしかに「癒し系」となるでしょう。
しかし、そこに描かれているターシャ・テューダーの暮らしには不満を疲れをただごまかすだけの癒しとは一線を画したものです。
根本から人生を問うことになるので、ある人が見れば「極論だ」とか「ただの理想だ」とか選択肢にも入らない生活に思えるかもしれまえん。
しかしぼくは多くの人にこの映画をおすすめたいと思います。
ちなみに、ぼくはこの映画をみた夜はなぜかとってもよく眠れて、8時間いちども目を覚まさずに爆睡でした(笑)
多分、心から癒されたのでしょう。
予告動画でその映像を少し見ることができるので是非ご覧ください。
「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」はAmazonビデオでデジタルレンタル・購入できます。
レンタルだと400円で観れます。
もちろんパッケージ版もありますよ。
ぜひ見てみて下さい。